90年代UKロックバンド「Ⅿansun」の壮大なる陰鬱文字

パッケージ

私の高校時代は自転車通学でした。

見渡す限りとにかく田んぼ道で交通量も少なく、CDからMDへ録音した音楽をイヤホンで聞きながら往きは20分、帰りは45分の行程でした。

帰りはとにかく急な坂道のため、音楽がなければやってられないとその行程を想い出すと今でもそう思います。

当時の私は他者に歌詞を悟られないように洋楽ばかり聞いていました。

当時は恋愛感情を多く表現した小室哲哉さんの楽曲が流行っており、恋愛をしたことがなかった私は流行りの音楽に恥ずかしさを感じたのです。

グーグードールズ、マリリンマンソン、オアシス、スティング、レディオヘッドなどが好きでした。

中でも「Mansun」と書きますが、読みはマンスンではなく「マンサン」を好んで聞いていたようで、一旦は全てのCDを中古買取ショップに売り払ったものの、また買戻し今でも聞き込んでいます。

ファーストアルバム アタックオブグレイランターン
セカンドアルバム シックス
Mansun – Naked Twister – BBC Radio One Session – 15th May 1996

YouTubuに公式視聴が投稿されており誰でも聞くことができます。

ぜひお試しあれ。

最初から最後まで一貫したメロディアスな楽曲です。

さて、本題になりますが、このロックバンド名「Mansun」の文字がとにかく昔から気になっており今回取り上げてみました。

これは歌詞カードの小冊子のいたるところで象徴的に使われている「Mansun」文字です。ファーストアルバムのジャケットの表紙も、これをコンピュータ処理して、背面の青いバラ画像の上に置いていると思われます。

全体的にイビツな感じで、線1つとっても真っ直ぐ綺麗にひかれた線は一本もありません。「ぐっ。ぐっぐっー。」「ぐっぐっー。」「ぐぐっー。」など歯を食いしばって抵抗しながら絵の具筆で引いた線かなと最初は思いましたが、何度も見ていると「ホイップクリームをしぼって書いているんじゃね?」という思いが沸き上がってきます。

かろうじて「M」と「a」は単体で離れていますが、残りの「n」、「s」、「u」、「n」の4字は前後の文字と接筆しています。クリーム同士がくっついた感じに見えなくもありません。

「s」字の下方を伸ばし、他字の揃った境界線からはみ出すことで頭文字「M」とのバランスをとっているように感じます。

「u」字は思いのほか大きく表現され、私には何か埋めるために掘った穴のように見えます。

文字ではありませんが、最後「.」も気になるところです。ピリオドなのでしょうか。

オリジナル
「s」下方を短く、点を消す

左(上)はオリジナルで、右(下)は検証のため「s」の下方を短く、点を消した加工したものです。

当然オリジナルが良いに決まってますが、加工したものと見比べると「s」の下方を伸ばしたことや「.」がある意味を知ることができます。

後日取り上げたいと考えている中国の「木簡」などは、一文字の一画を極端に太く長く表現したりします。

また、これも近いうちに取り上げたいと考えている今井雪凌先生の篆書体作品を見ると、ピリオド的な点を書く表現方法があります。

その他にも文字作品制作において、たっぷりと墨をつけた筆から滴り落ちてしまった墨だまりの点が、えも言われぬ作品に効果をもたらす場合があります。

文字作品は、「一点一画」が作品全体に多大な影響を及ぼします。

さらに、「Mansun」文字がホイップクリームで書かれたものであったのならと考えると、鉛筆や筆で書くことだけが文字表現ではないことを改めて気付かされるのでした。

想い出すとこっ恥ずかしい鬱々とした青春時代を共に過ごした「Mansun」の楽曲を聞き、そのジャケット文字に触れると「決して完璧であることなかれ。酸いも甘いも作品(人生)なのだ。」と未だに失敗のどん底にいる自分を肯定することができるのです。

これ「壮大なる陰鬱」。

genpopo

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